「あっ! インプラントの上部構造(人工歯)が取れちゃった!」
「インプラントが丸ごと抜け落ちることってある?どうすればイイの?」
通常、インプラントは、多少の力がかかったくらいでは取れたり外れないように固定されています。
安定性が高いインプラントですが、何らかの原因により、
-
上部構造(人工歯)が取れた
-
アバットメントが外れた
-
インプラントが丸ごと抜け落ちた
などのトラブルが起きる場合も。
今回は、「インプラントが取れた・外れた場合の応急処置の仕方」、および、「歯科医院での交換・再装着(再埋入)の流れ」について、ご説明します。
目次
■インプラントの構造
インプラントが取れた・外れた場合の対処法についてご説明する前に、インプラントの基本的な構造をお伝えします。
◎インプラント体、アバットメント、上部構造の3つのパーツで構成されています
インプラントとは、顎の骨に人工歯根を作る治療法です。
インプラントは以下の3つのパーツで構成されています。
[インプラントを構成する3つのパーツ]
インプラント体:顎の骨に埋め入れる人工歯根
アバットメント:インプラント体と上部構造を連結するパーツ
上部構造(人工歯):歯ぐきから上の歯の部分を補う人工歯
—–
インプラントが取れた・外れた場合、上記の3つのパーツのどれが取れた・外れたのかによって対処法が異なってきます。
■インプラントが取れた・外れた場合の応急処置の仕方&歯科医院での交換・再装着(再埋入)の流れ
◎まずは、鏡を見て、どのパーツが取れた・外れたのかを確認しましょう
インプラントが取れた・外れたときは、まずは、鏡を見て、どのパーツが取れた・外れたのかを確認しましょう。
取れた・外れたパーツを確認できましたら、パーツの状態に応じて、以下のような応急処置を行ってください。
①上部構造(人工歯)orアバットメントが取れた・外れた場合
[応急処置の仕方]
-
取れた・外れたパーツを洗いましょう
-
パーツを乾燥させ、清潔なケースの中にパーツを入れて保管してください
-
ケースを持参し、できるだけ早く、インプラント治療を受けている歯科医院を受診しましょう
上部構造(人工歯)orアバットメントが取れた・外れたときに考えられる主な原因としては、以下のようなものが挙げられます。
[上部構造(人工歯)orアバットメントが取れた・外れたときに考えられる主な原因]
-
アバットメントがゆるんでいる
-
アバットメントがひび割れ、破損している
[歯科医院での交換・再装着の流れ]
アバットメントのゆるみ・破損が起きている場合は、アバットメントを締め直す・交換する処置を行います。
上部構造(人工歯)が変形・破損している場合は、人工歯の修理・交換が必要になるケースも。
②インプラント体(顎の骨に埋め入れた人工歯根)が取れた・外れた場合
インプラント体が取れるトラブルは重篤な状態です。
インプラント体が取れた・外れた場合、
-
インプラントの箇所の顎の骨がひび割れている
-
インプラントの箇所を含む顎の骨が溶けている
などの重篤なトラブルが生じている可能性があります。
[応急処置の仕方]
-
インプラント体が取れた・外れた箇所を清潔なガーゼで覆ってください(取れた・外れた箇所から出血している場合は、定期的にガーゼを交換しましょう)
-
取れた・外れたインプラント体を洗いましょう
-
インプラント体を乾燥させ、清潔なケースの中にインプラント体を入れて保管してください
-
ケースを持参し、できるだけ早く、インプラント治療を受けている歯科医院を受診しましょう
インプラント体が取れた・外れたときに考えられる主な原因としては、以下のようなものが挙げられます。
[インプラント体が取れた・外れたときに考えられる主な原因]
インプラント手術の直後~インプラント体と顎の骨が結合して安定した状態になるまでの治癒期間(骨結合が進む期間中)
-
手術時の歯科医院側の衛生対策不足により、患部に細菌感染が起きて骨結合がさまたげられている
-
手術時のドリリングの冷却不足により、顎の骨にやけどが起きて骨結合がさまたげられている
-
手術後、患者様が抗生剤(抗生物質)を飲み切らず、患部に細菌感染が起きて骨結合がさまたげられている
-
手術後、骨結合が安定する前に、患部の仮歯で弾力のある食べ物(肉など)や硬い物を噛んでしまい、骨結合がさまたげられている
-
手術後、骨結合が安定する前に喫煙してしまい、タバコに含まれるニコチンや一酸化炭素などの有害物質が原因で骨結合がさまたげられている
インプラント体と顎の骨が結合し、安定した後(インプラント治療後)
-
インプラント周囲炎(歯周病)が進行し、顎の骨が溶けている
-
インプラント治療前から患っていた歯周病が進行し、顎の骨が溶けている(インプラント治療前の歯周病治療における病巣の取り残し)
-
インプラント体or上部構造(人工歯)の位置が適切ではなく、噛み合わせが乱れて顎の骨がダメージを受けている
-
生まれつき噛む力が強い、歯ぎしり・食いしばりの癖などが原因で、顎の骨がダメージを受けている
[歯科医院での再埋入(orインプラント以外の補綴治療)の流れ]
インプラント体の脱落に対しては、歯周組織再生療法を含む歯周外科治療が必要になるケースが多いです。歯ぐきや顎の骨などの歯周組織の状態に応じて歯周外科治療を行い、歯周組織の状態改善を図ります。
歯周外科治療を行った後のインプラントの再手術についてですが、歯周組織の状態が悪くない場合は、再手術でインプラントを入れ直せるケースもあります。
{歯周組織のダメージが大きい場合は、インプラント体の再埋入が難しいケースも}
-
インプラント周囲炎(歯周病)が重度に進行している
など、歯周組織のダメージが大きい場合は、インプラント体の再埋入(インプラントの再手術)が難しいケースも。
-
歯周組織のダメージが大きく、インプラント体の再埋入が困難なケース
では、歯周外科治療後、患者様のご同意を得た上で、インプラント以外の補綴治療(ブリッジ・入れ歯)で歯を補う形になります。
■インプラントが取れた・外れたときにしてはいけないこと 放置はダメ?
◎ご自身で元の位置にインプラントパーツを戻そうとしないでください
インプラントパーツは、専用の器具がないと固定できない仕組みになっています。患者様がご自身で元の位置に戻そうとすると、パーツが変形・破損するおそれも。
◎放置はNG
インプラントパーツが取れた・外れたまま放置すると、パーツ・患部の状態が悪化するおそれがあります(パーツの変形・破損が広がる、顎の骨の亀裂が深くなる、など)。
放置せず、なるべく早く歯科医院を受診するようにしましょう。
【毎日のセルフケア+歯科医院の定期メンテナンスが重要です】
今回は、「インプラントが取れたときの応急処置&交換・再装着(再埋入)の流れ」について、ご説明をさせていただきました。
インプラント体が抜け落ちる重篤なトラブルが起きてしまった方の多くは、
-
毎日のセルフケア(歯みがき+歯間清掃)
-
歯科医院で受ける定期メンテナンス(歯・インプラントの状態チェック(検診)+歯・インプラントのクリーニング)(プロケア)
が不足している傾向が見られます。
ケア・メンテナンス不足はインプラント周囲炎が進行する主な原因です。
インプラント周囲炎の進行をはじめとして、インプラントが取れた・外れたなど、インプラントのトラブルは様々な原因によって起こり得ます。
原因は様々ですが、インプラント治療後はセルフケア+プロケアを継続することで、トラブルの発生リスクを低減できます。
トラブルの発生リスクを抑え、インプラントを長持ちさせるために、セルフケア・プロケアを継続しましょう。